同じように見える言葉を、まず分ける
AIについての記事や会話では、
- AI
- Machine Learning
- Model
- Language Model
- LLM
- AIサービス
といった言葉が、同じものを指しているように使われることがあります。しかし、これらは同義語ではありません。本書では最初に、この違いを整理します。
AIはLLMだけを意味しない
AI(Artificial Intelligence、人工知能)は、LLMだけを指す言葉ではありません。Machine Learning(機械学習)はAIと関連する分野ですが、これもAI全体と同義ではありません。
ここでAI全体を完全に分類する必要はありません。まずは AI = LLM ではない、と理解できれば十分です。現在よく目にする生成AIやLLMは、AIについて考えるときの重要な対象ですが、それだけでAI全体を表しているわけではありません。
Model・Language Model・LLM
Model(モデル)は、AIサービスそのものとは区別して考えられる対象です。Language Model(言語モデル)は、言語を対象として扱うモデルの一種として説明できます。LLMは Large Language Model の略です。つまり、次の関係で考えることができます。
Model
└─ Language Model
└─ LLM
ModelとAIサービスは同じではない
利用者が使うAIサービスと、その内部で利用されるモデルも同じものではありません。AIサービスには、モデル以外のソフトウェア機能が組み合わされる場合があります。たとえばサービスによっては、
- Search
- Retrieval
- external tool
などが利用されることがあります。そのため、利用者が見たサービス全体の振る舞いを、そのまま「モデルそのものの性質」だと決めることはできません。
ある返答が、
- モデルによる生成
- サービス側の機能
- 外部情報へのアクセス
- 外部ツール
のどれにどの程度関係しているのかは、公開情報や観測可能な情報がなければ判断できない場合があります。詳しい違いは後の章で扱います。
Software・Service・Systemをどう読むか
ここから先の説明では、software、service、system という言葉も使います。本書では、初学者向けにまず次の違いを意識してください。
Model
≠
利用者が使うサービス全体
そして、サービス全体を考えるときには、モデルだけでなく、モデルを利用するソフトウェア機能や外部機能など、複数の要素が関係する場合があります。本書で system という言葉を使う場合も、「モデル一個だけ」を自動的に意味するものとしては扱いません。
どこまでがモデルについて分かっていることで、どこからがサービスやシステム全体についての話なのか
を混同しないための区別です。
Transformerも別の対象
Transformerという言葉もよく登場します。Transformer、LLM、AIサービスは、それぞれ異なる対象を指す用語であり、同義語としては扱いません。Transformerがどのような役割を持つのかは、第4章でモデルが入力から出力を生成する流れを見るときに扱います。
図で整理する
ここまでの関係を、単純化して整理すると次のようになります。
この図は、「モデル」と「利用者が接するサービス全体」を同じものとして扱わないための概念図です。
この章のまとめ
この章で最も重要なのは、次の区別です。
AI != LLM
Model != AIサービス
LLM != AIサービス
Transformer != LLM
完全なAI分類表を覚える必要はありません。まずは、
- AIはLLMだけを意味しない
- Machine LearningとAI全体は同じではない
- Language Modelはモデルの一種として説明できる
- LLMはLarge Language Modelを指す
- モデルとAIサービスは同じものではない
- サービスにはモデル以外の機能が関係する場合がある
- サービス全体の振る舞いを、自動的にモデル固有の振る舞いだと考えない
という区別を持ってください。
次の章では、これらの言葉が現在の形になるまでの流れを、短い歴史の地図として見ていきます。